この記事の要点(30秒で読めます)
- やぐらルームは床面積を広げず、寝る・くつろぐを上下に重ねて役割を増やした部屋です
- 骨組みの見通し、壁に預けた機能、階段と収納の兼用に注目すると設計の意図が見えます
- 自宅の床に置いている物を、壁や収納に1つ移せないか眺めてみましょう
結論から言うと、やぐらルームは「広く見せる部屋」というより、「ひとつの空間に複数の役割を持たせた部屋」です。寝る場所とくつろぐ場所を上下に重ね、収納と階段、テレビと鏡を壁や段に預けることで、床に家具を置かずに済ませています。ただし、物理的な床面積が増えるわけではありません。今日は建築士の目で、この部屋の仕組みと、住まいに持ち帰れるヒントを整理してみます。
OMO5東京大塚「やぐらルーム」はどんな部屋?

やぐらルームは、星野リゾートの都市観光ホテル「OMO5東京大塚」の客室タイプです。公式ページでは、畳張りの床、ヒノキ材のやぐら、箱階段、仕掛け壁、ロールカーテン、洗い場のある浴室が「こだわり」として紹介されています。ホテル全体は125室で、客室の定員は1〜3名とされています(星野リゾート公式、2026年10月22日確認)。
上段はベッド、下段はくつろぎスペース
部屋の主役は「やぐら」と呼ばれる木の立体構造です。公式ページによると、上段がベッド、下段がくつろぎ用のソファになっています。先に休んでいる人がいても、もうひとりは下でくつろげる、という使い方が想定されています。
ここで面白いのは、ベッドとソファを「並べて」置くのではなく「重ねて」いる点です。同じ床の上に二つの居場所ができるので、同じ広さでも、使える場所の数が増えます。
ホテル客室を「立体」で使うという発想
設計を手がけた佐々木達郎建築設計事務所は、作品紹介で「20㎡程度の小さな空間を立体的に利用し」と説明しています。やぐら寝台、小上がり、仕掛け壁、箱階段といった造り付けの家具で構成する、という考え方です。
なお、客室面積の細かな数値や天井高は、今回確認した公式ページでは見つけられませんでした。ほかの資料には具体的な数値も見られますが、一次情報で裏づけられていないため、この記事では「20㎡程度」という設計者の表現にとどめます。
なぜコンパクトな部屋が広く感じられるのか?

先に整理しておきたいのは、「床面積が広い」ことと「広く感じる」ことは別、ということです。ここから先は、公式の説明を踏まえた、建築士としての私の見立てです。設計者が語った理由そのものではない点にご注意ください。
理由1:視線を遮りにくいヒノキの木軸フレーム
やぐらは、三寸角(約9cm角)のヒノキ材による木の骨組みです。設計事務所の作品紹介でも三寸角のヒノキ材が使われていると書かれています。
壁で囲った寝室ではなく、骨組みで区切る。この違いは、視線に表れます。骨組みは向こう側が透けるので、部屋の奥まで目が届きやすくなります。人が広さを感じるとき、実際の面積と同じくらい、「どこまで見通せるか」が効いてくるものです。
理由2:テレビも収納も引き受ける「仕掛け壁」
公式ページによると、仕掛け壁にはテレビ、鏡、ハンガー、タオル掛けがまとめられています。通常は床に置く家具の機能を、壁面に移しているわけです。
床に置くものが減ると、床が見える面積が増えます。家具の脚が並ぶ部屋より、床がすっきり見える部屋のほうが、広く感じられます。壁の厚みや面を「家具の置き場」として使う発想は、住宅でも応用しやすい考え方です。
理由3:階段と収納を兼ねる「箱階段」
箱階段は、ベッドへ上る階段そのものが収納になっています。公式ページでは、スーツケースから小物まで収まると紹介されています。階段の下や内側は、普通は使いにくい余り空間です。そこを収納にすれば、別に収納家具を置かずに済みます。
どれも、床面積を増やす工夫ではありません。同じ床面積のなかで「何を床に置かないか」を選んだ結果、見た目の広さと使い勝手が整う、という設計です。
通路が脱衣所に?小さな部屋に隠れた工夫

ロールカーテンで場所の役割を切り替える
公式ページには、ロールカーテンを降ろすと洗面スペースが脱衣所に変わる、と書かれています。ふだんは通路であり洗面所である場所が、必要なときだけ個室のような場所になる。壁や扉で固定せず、カーテン一枚で役割を変える仕組みです。
専用の脱衣室を設けると、その分の床面積が必要です。時間によって使い方を変えれば、同じ場所を二度使えます。「空間を増やす」のではなく「同じ空間を使い回す」考え方で、小さな部屋ほど効果が出ます。
畳と洗い場付き浴室が生むくつろぎ

床は畳張りで、素足で過ごせます。公式ページが挙げる浴室は、洗い場を備えたものです。靴を脱いで上がる畳の床は、座る、寝転ぶ、荷物を広げるといった行為を、椅子やテーブルなしで受け止めてくれます。
床座は、家具の数を減らせる生活スタイルです。小さな部屋で家具を減らすと、床の「余白」が残り、これがそのままゆとりに変わります。
やぐらルームは使いにくい?気になる注意点

ここでお断りです。今回、出典と投稿内容を確認できた宿泊者の口コミは用意できていないため、個別の口コミは引用しません。以下は、造りから一般に考えられる留意点であり、「こういう声が多い」という意味ではありません。
ベッドへの昇降と頭上の高さ
ベッドが上段にある以上、階段の昇り降りは避けられません。夜間にお手洗いへ行くとき、足元が見えにくいこともあります。上段や下段では、立ち上がるときに頭上の高さが気になる場面もあり得ます。階段の形や手すりの有無は、公式の資料では確認できないため、ここでは断定しません。
荷物・空調・プライバシーの課題
箱階段は収納になりますが、荷物が多い旅行では入りきらない場合もあるでしょう。また、暖かい空気は上にたまる性質があります。空調の仕様は資料で確認できませんが、一般に、ロフト状の寝床は季節によって温度の感じ方が変わりやすいと言われます。ロールカーテンも壁ではないため、音や気配は完全には遮れない点に注意が必要です。
宿泊前に確認しておきたいこと
次の点は、予約前に公式ページや問い合わせで確かめておくと安心です。
- 階段の昇り降りが負担にならないか(同行者の年齢や体調を含めて)
- 荷物の量と、収納に入るサイズ
- 宿泊人数に応じた、寝る場所の割り当て
- 料金や朝食、館内サービス(変動するため、直前に公式ページで確認)
公式の施設紹介ページには、1泊2日・1名・食事なしで18,000円〜の目安が載っていました(2026年10月22日確認)。時期や空室状況で変わるため、あくまで目安です。
狭い家にも応用できる5つの設計アイデア

ここからは、ホテルの設計をそのまま真似するのではなく、考え方だけを住まいに取り入れる方法を考えます。
壁面収納と家具の兼用
床に置いていた棚やテレビ台を、壁の厚みや壁面に移せないか考えてみます。壁に飾り棚やフックをつくれば、床の面積が少し空きます。ただし、住まいでは物の量がホテルよりずっと多いので、隠す収納と見せる収納を分けておくことが大切です。
視線の抜けを妨げない間仕切り
部屋を分けたいときは、壁ではなく、格子や低めの家具で区切る方法があります。見通しが残るので、実際の面積より広く感じやすくなります。一方で、音や視線は完全には遮れません。プライバシーが必要な場所は、きちんと壁にするほうが向いています。
通路を兼用する空間計画
廊下を「ただ通るだけの場所」にせず、洗面や収納、ちょっとした作業台として使う方法です。通路の幅は日常の動線に直結するので、荷物を持っても通れるかを必ず確かめてください。
床座を活かした家具の削減
畳やラグで床に座る暮らしにすると、ソファやダイニングチェアを減らせます。ただし、立ち座りの負担があるため、膝や腰に不安がある方や、将来を考えるご家庭は、無理のない範囲で取り入れるのが無難です。
安全性を優先した立体利用
階段や段差のある場所は、手すり、足元照明、滑りにくい仕上げを優先して計画します。ホテルの雰囲気を目指すより先に、毎日使えるかどうかを基準にしてください。
ホテルでは成立しても、住宅で真似してはいけないこと

ホテルの客室は、短い滞在と、毎日のプロによる清掃を前提に成り立っています。住宅は、毎日、何十年も使います。同じ造りでも、評価が変わって当然です。
毎日の昇り降りと、年齢による変化
ロフトベッドのような上下の寝床は、元気なうちは気にならなくても、体力や視力が変わると負担になります。夜間のお手洗いや、体調を崩した日のことも想像してください。階段の勾配、手すり、頭上の高さは、住まいでは特に慎重に決めるべき項目です。
荷物・換気・清掃・空調の現実
住まいでは、衣類、日用品、季節の物が増え続けます。ホテルのような最小限の持ち物では暮らせません。寝床を高い位置に置くなら、換気や空調の計画、ホコリのたまりやすさ、掃除のしやすさも合わせて考える必要があります。
ロフトや小屋裏収納の法規は個別に確認を
ロフトや小屋裏収納の扱いは、天井の高さや面積、設置方法などの条件で変わります。自治体の運用によって判断が分かれることもあるため、単純な目安だけで決めないでください。計画の際は、設計者や、お住まいの地域の建築指導の窓口に確認することをおすすめします。
まとめ|部屋の広さは床面積だけでは決まらない
やぐらルームの要点は、次の三つです。
- 視線が抜ける骨組みで、空間を区切りすぎない
- 家具の機能を壁や階段に預けて、床の余白を残す
- 同じ場所の役割を、カーテンなどで時間によって切り替える
住まいの広さを考えるとき、つい平米数に目が行きます。けれど、見通し、動線、家具の役割、時間による使い分けを見直すだけで、同じ広さでも居心地は大きく変わります。まずは今のお部屋で、床に置いているものをひとつ、壁か収納に移せないか眺めてみてはいかがでしょう。
よくある質問
Q. OMO5東京大塚のやぐらルームは本当に狭いのですか?
床面積が大きいわけではありませんが、寝る場所とくつろぐ場所を上下に分け、家具の機能を壁や階段に預ける設計です。設計者は「20㎡程度」の空間を立体的に使うと説明しています。
Q. やぐらルームの広さ(㎡)は何平米ですか?
今回確認した公式ページには面積の記載がありませんでした。設計事務所の作品紹介では「20㎡程度」とされています。正確な数値は予約時に公式でご確認ください。
Q. 天井の高さはどのくらいですか?
確認した公式資料には記載がありませんでした。天井高を断定できる一次情報がないため、この記事では数値を載せていません。
Q. 何人まで泊まれますか?
ホテル全体の客室定員は1〜3名と案内されています(2026年10月22日確認)。部屋ごとの寝具の割り当ては、公式で確認してください。
Q. 上段のベッドへはどうやって上がりますか?
公式ページによると、ベッドに続く階段が収納を兼ねた「箱階段」になっています。手すりの有無や勾配は資料で確認できませんでした。
Q. 荷物はどこに置けますか?
公式ページでは、箱階段にスーツケースから小物まで収まると紹介されています。大きな荷物が複数ある場合は、事前に確認すると安心です。
Q. 着替えのプライバシーはどう確保しますか?
ロールカーテンを降ろすと、洗面スペースが脱衣所に変わると公式に案内されています。壁ではないため、音や気配の感じ方は個人差があるでしょう。
Q. 浴室はユニットバスですか?
公式ページには「洗い場を備えたゆったりしたバスルーム」とあります。詳しい仕様は確認できませんでした。
Q. 宿泊料金の目安はいくらですか?
公式の施設紹介ページに、1泊2日・1名・食事なしで18,000円〜の目安が載っていました(2026年10月22日確認)。料金は時期や空室で変動します。
Q. この造りは自宅にそのまま真似できますか?
おすすめできません。ホテルは短期滞在と日々の清掃が前提で、住宅は毎日の昇降、荷物、換気、空調、年齢による変化を考える必要があります。法規の扱いも個別の確認が必要です。
参考・出典
- 星野リゾート公式「OMO5東京大塚 やぐらルーム」
https://hoshinoresorts.com/ja/brands/omo/sp/yagura_tokyootsuka/ - 星野リゾート公式「OMO5東京大塚 施設紹介」
https://hoshinoresorts.com/jp/cards/gplpskf8cht3/ - 星野リゾート公式「OMO5東京大塚 by 星野リゾート」
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/omo5tokyootsuka/ - 佐々木達郎建築設計事務所「星野リゾート OMO5 東京大塚」
https://www.tatsurosasaki.com/works/387/
※本記事の情報は執筆時点(2026年10月22日確認)のものです。開館時間・料金・予約方法・休館日・工事等の最新情報は、必ず施設公式サイトでご確認ください。
※本記事の挿絵は概念図・イメージであり、実際の建物の形状・色・細部とは異なる場合があります。
